神様と運命革命のパラドクス(神パラ)

ショートストーリー『神様のいない庭で』

第3話『天使の戯れ・その1』

「はーい、今日はウフフな実験をしたいと思いまぁす♪」

 いきなり立ち上がったシェリエルが妙なことを言い出したのは、
 あたしらが紅茶を飲み終えた直後だった。
 どうでもいいけど、シェリエルってワザとおっぱい揺らしてるよな。

「実験ですって? いい加減にしてちょうだいな。
 どうせ、くだらないゲームなのでしょう?
 時間は無限じゃないのよ。有意義に使わなくてはね」

 そう言うラナエルだって、今日ものんびりケーキ食って紅茶飲んでるだけなんだけどな……
 隣のリリエルはぽかんとシェリエルを見上げてる。
 あたしはといえば、溜め息をつくことくらいしかできなかったりする。
 ようやくわかってきたんだ。こいつらとの付き合い方ってヤツが。

「シェリエル先輩、実験って何ですか?」

 あちゃ……
 リリエル、そこはツッコんじゃダメだ。
 ほら、シェリエルの奴がにんまり笑ってるじゃないか……

「実験というのはぁ――」
 おもむろにおっぱいの谷間にもにゅんと手を突っ込むシェリエル。
 引っこ抜かれた手には、カードの束が握られていた。見た目はトランプっぽい。

「これでぇす♪」
「シェリエル先輩、それは何ですか?」

 リリエルは興味津々だ。
 鼻歌まじりのシェリエルがテーブルにカードを並べていく。
 裏返しにされたカードは全部で22枚。並べ方は……テキトーくさいな。

「これはねぇ、とある世界で手に入れたアルカナっていうものよぉ。
 このカードにはねぇ、みんなの運命を教えてくれる不思議な力があるのよぉ♪」

 ラナエルが鼻を鳴らす。

「運命ね。益々くだらないわ。
 こんな安っぽいカードごときに、わたしの運命が計れると思っていて?」
「いいからいいからぁ。ささ、ラナエルちゃんも一枚めくっちゃってぇ♪
 それとも、自分の運命を知るのが恐いのかしらぁ?」
「ふんっ。いいわ。そこまで言うのなら、つきあってあげましょう。
 わたしの右手は因果の螺旋すらも自在に操れるのよ」

 意味不明なことを言いながら、ラナエルが中央のカードを一枚めくった。
 そこに描かれていた絵は――妙な格好をした男。

「シェリエル、この絵は何かしら?」
「これは愚者ねぇ。なるほどなるほどぉ♪」
「愚者ですって? そう、わたしは愚か者ということ……面白いわ」

 シェリエルがパンと手を打つ。

「はぁい。クロウエルとリリエルも、めくっちゃってぇ♪」

 な、なんか緊張するな……
 少し迷ったあたしは、手元にあるカードを選んだ。
 そっと裏返してみる。そこには壺を持った女が描かれていた。

「こんなん出たんだけど」
「クロウエルは節制ねぇ」
「なんだそりゃ……よくわかんねえけど、愚者よりはいいっぽいな、うん。
 なあ、リリエルのは何が描いてあるんだ?」

 リリエルがおずおずとカードを差し出す。

「こ、これです……」

 車輪だ。でっかい車輪が描いてある。

「ウフフッ。そっかぁ、そうきちゃったのねぇ。
 リリエルのカードはね、運命の輪。ホイール・オブ・フォーチュンよぉ♪」

「運命の輪……」

 なんだか三人の中で一番意味深なカンジがする。
 てゆーか、結局このカードから、あたしらのどんな運命がわかるっていうんだ?

「なあ、シェリエル」
「なぁに?」
「で、このカードの意味は?」
「ウフフッ、知らなぁい♪」

 なんだそりゃ……投げっぱなしかよ。逆に気になるじゃねえか。
 シェリエルの奴、もうカード片付け始めてるし……

「待ちなさい、シェリエル。あなたも引きなさいな」

 ラナエルの言葉に、シェリエルの手がぴたりと止まった。
 妖しく微笑み、束ねたカードの一番上を無言でめくる。
 そこには、黒い羽の悪魔が描かれていた。

第4話に続く――