神様と運命革命のパラドクスショートストーリー『神様のいない庭で』

SPECIAL

第1話『天使のお茶会・その1』

変な天界だと思った。それがここの第一印象だ。
まず天使の数が少な過ぎる。ここにはあたしを含めて、六人の天使しかいない。
しかも、どいつもこいつも一癖どころか二癖も三癖もありそうな連中ばかりだ。

順番に挙げてみるか。

姫川ガルシオン。
こいつはまだマシなほう。何考えてるのかわかんない髭面だけど、とりあえずみんなのまとめ役っぽい。微笑んだときの口元が若干胡散臭いのがアレだな。

伊集院レキエル。
こいつはツンツンしてる。せっかくあたしから話しかけても、ロクに会話が続かない。
てゆーか、俺に構うなオーラだしまくり。勘違いイケメンだな、うん。

綾小路シェリエル。
こいつはエロい。ドエロ。口を開けばセクハラ紛いの与太話ばかりだ。
ちなみに、シェリエルのおっぱいはワールドカップ。デカすぎ。
肩こらねえのかな。

白鳥ラナエル。
こいつは天使として終わってる。完全に中二病を拗らせちまってるから。
ことあるごとに、わたしの二つ名は――って語りだすんだ。
しかも毎回二つ名が違うし。よくネタが持つよな。

東條ネルエル。
こいつは……よくわかんない。だってヒキコモリだし。
部屋から出てこねえんだ、マジで。何をやってるかもさっぱり。
ガルシオンだけはネルエルの部屋にちょくちょく出入りしてるみたいだけど。
そんでもって、最後がこのあたし、竜崎クロウエルだ。
まあ、あたしも大概だよな。人のこと言えないか。でもさ、あたしなりにここに馴染もうとしてんだよ。
実は料理とか、そういうの得意だったりするから。やっぱ嬉しいじゃん。
あたしの作る料理を食べて、みんなが笑ってくれるとさ。そんなこと考えながら、この天界で暮らし始めたあたしなんだけど……なんだけど……

「お前ら、今日もクッキーたかりにきたのかよ!」

あたしの目の前で芝生にちょこんと腰を下ろしているのは、シェリエルとラナエルだ。
思いっきり怒鳴ってやったのに、二人ともケロッとしてやがる。

「だってえ、クロウエルの淹れてくれる紅茶ってば、とっても美味しいんだもぉん。ねえ、ラナエルちゃん?」
「それは否定しないわ。だけどクロウエル、勘違いしないでもらえるかしら?わたしたちがここにいるのは、あなたがお茶会を開きたいと言ったから、こうしてわざわざ時間を作って来てあげているのよ。感謝こそされても暴言を吐かれる憶えはないわ。理解できたのなら、さっさと紅茶とクッキーを用意なさいな」
「くっ……」

確かにそうだ、確かにお茶会を開こうと言ったのは、あたしだ。
だって、二人がこんな美味しい紅茶なら毎日でも飲みたいって言うから、あたしもつい調子に乗っちまって……だからって、本当に毎日押しかけられるなんて思いもしなかったよ。
遠慮って言葉を知らねえのかよ。身から出た錆ってのは、こういうことを言うんだよな……あー、もうっ!

「わかった、わかりました。試してみたい茶葉のブレンドがあるから、そいつを淹れてやるよ」
「やったぁ。お姉さん、うれしいわあ。ほらぁ、見て見てぇ。おっぱいもこんなに喜んでるのぉ。ぽよよーん♪」
「早くなさいな。わたしを待たせていいのは、血の契約を交わした古の神龍だけよ。まあ、あなたがどうしてもと言うのなら、3分だけ待ってあげてもよくってよ」

こ、こいつら、マジでぶん殴りてえ……
でも駄目だ……
天使としての力は、あたしのほうが格下なんだよな。悔しいけど……

「ったく……急いで準備するから、待ってろよ」

紅茶とクッキーを急かす声を背中で聞きながら、あたしは自分の部屋へ戻る。

「あっ」

唐突に物陰から飛び出してきたレキエルとぶつかった。
レキエルは相変わらず無愛想な顔だ。
ゴメンの一言もありゃしない。いやいや、ここはあたしが話のきっかけを……

「レキエル、あのさ……これからお茶会やるんだけど、もしよかったら――」
「断る」

素っ気無い返事――うあーっ!
なんで、この天界はこんなに変人揃いなんだよ!