神様と運命革命のパラドクスショートストーリー『神様のいない庭で』

SPECIAL

第1話『天使のお茶会・その2』

「は、はじめまして! わたくし、早乙女リリエルと申します。こ、このたびは、わたくしをこの天界に招き入れていただき、まことにありがとうございます!足手まといにならないように一生懸命がんばりますので、よろしくお願いいたします!」

先輩方の前で、そう挨拶をさせていただいてから早一ヶ月――
わたくしたちは“奴ら”との戦いに向けて日夜作戦を練って、いるのではなく……

「今日も今日とて、お茶会なのですね……」
「お、どうした、リリエル。今日のケーキ、あんまし美味くねえか?」
「い、いいえ、そんなことはないです。クロウエル先輩の作ってくださるお菓子は、ほっぺたが落ちそうなくらい美味しいです」
「そっか、よかった。ありがとな」

ニカッと笑うクロウエル先輩。

「それにしては浮かない顔をしているわね、リリエル」

ラナエル先輩がそう言って、わたくしをちらりと見ます。
この人は勘が鋭いです。隠し事もすぐに見抜かれてしまいます。

「うふふ、あなたが何を考えているか当ててあげましょうか。“奴ら”との戦いに備えもせずに、毎日こうしてお茶会ばかり開いて大丈夫なのかしら。そんなところよね?」
「はい、そのとおりです……」

そうなのです。正直なところ、お茶会は楽しいです。
紅茶もお菓子もすごく美味しいです。
だけど、本当にこんな毎日でよいのでしょうか――

「しょうがないわよねえ。だって、神様がいないんだものぉ」

シェリエル先輩が大きなおっぱいをぷるるんと揺らしました。

「あの、シェリエル先輩。その神様は、どこにおられるのでしょうか……」
「どこにいるのかしらねえ。ネルエルがゴーサインを出さないことには、こっちとしても動きようがないのよねぇ」
「そうですか……」

そのネルエル先輩は部屋から出てきません。
実はわたくし、未だに一度もお顔を拝見したことがないのです。
謎の人です。

ふと首を巡らせると、神殿に入っていくレキエル先輩が見えました。
レキエル先輩は、ちょっと近寄り難い雰囲気の人です。あまりお話もしてくれません。

「リリエルちゃんは、あのイケメン君が気になるのかしらぁ?」
「そ、そうじゃないです。でも、レキエル先輩はお茶会に参加なさいませんよね……」
「するワケねえじゃん」

舌打ちするクロウエル先輩です。

「何回誘っても『断る』っていうだけだし。マジで愛想なさすぎだろ。もう絶対に誘ってやんねえ」
「いつも“回路の間”にいらっしゃいますよね。何をなされているのでしょうか……」
「うふふ、何もすることがないから、あそこに日参しているのよ。いじらしいとは思わなくて?」
「よく、わかりません……」

本当に、よくわからないのです。
確かに、レキエル先輩はわたくしが声をおかけしても、冷たい言葉しか返してくれません。
でも、その瞳はどこか哀しそうな色を湛えているような気がするのです。

「いつか、レキエル先輩ともこうやって一緒に紅茶を飲めたらいいですね……」
「そんな日が来るとは思えねえけどな」
「きっと来ますよ、クロウエル先輩!わたくし、信じてます。レキエル先輩だけじゃないです。ネルエル先輩もガルシオン先輩も、みんなでお茶会をできる日がきっと来ます。だって、みんな仲間じゃないですか!」

そして、その中心には神様がいてほしいのです。
今はまだお会いできない神様だけど、いつかきっと――

「でもねえ、リリエルちゃん?」
「はい。なんでしょうか、シェリエル先輩」
「レキエルも昔からあんなにツンツンしてたワケじゃないのよぉ?ま、昔って言うほど昔でもないけどねぇ。理由はそのうちわかるわよ。楽しみにしてなさぁい♪」
「はあ……」

どうやらレキエル先輩には秘密があるようです。
そうです、誰にでも他人に話せないことがあるのです。
わたくしにだって……