【水月さんの投稿】

私は一時期作業中、寝る前に等、誰かと喋っていたりイヤフォンをしてはいけないような場面ではない限りずっと怪談話の朗読を聞いているという、怪談中毒者とも言えるような日々を送っていました。

実際にホラースポットに行ったりすると言う事はなかったですが、とにかくずっと怪談を耳にしていました。
有名な怪談話から、ちょっと笑える怪談話まで、数え切れないほどです。

そんな日々を送っていたある日の事。
その日は怪談話を聞きながら寝る気にはなれず、そのまま眠りに落ちようとしていました。しかし中々寝付けません。
寝付きは決して悪い訳ではないのですが、その日は珍しく寝付けませんでした。
すると、そんな寝付けずゴロゴロしていた私の耳にして異音が入ってきました。
「カサカサ、カサカサ」と、ビニール袋が床に擦れるような音です。
最初は「気のせいかな?」と思っていました。
ですが、その音はずっと消えず、少しずつ大きくなるのです。
最初は遠くの方で聞こえていたのに、段々近づいてきて、とうとう私の足元の辺りで何かが動いている、そんな気配まで感じるようになりました。
私は怖くなり、頭から足まですっぽり被っていた毛布を握りしめ、少しでも動かないようにするのでいっぱいいっぱいでした。
なるべく意識しないよう、きつく目を瞑ってやり過ごす事しか出来ません。
すると、ゆっくりと眠気がやってきて、気がつくと朝になっていました。
朝になり、一緒に住んでいる両親に昨日変な音がしなかったかと尋ねましたが、そんな音はしなかったそうです。

あれは何だったのか。
毛布から覗いてみたら何か分かったのか、今になっては確認のしようがありません。
同様の出来事はあれ以来私自身に起きていませんし、両親にも起きていません。
ただ、今になって思うのは怪談を聞きすぎていた私の元に「本物」が来てしまったのかな、と。
怪談が新たな「怪異」を引き寄せるというのは、よく言われておりますので。