「・・・ゆるキャラを作ろう」
部長の神無が提案した。
如月優也は地元の学校に通う高校生。
優也が副部長を務める郷土歴史研究会は文化祭で何か成果を出さないと部室を取り上げると、生徒会から宣告されてしまった。
そこで、ゆるキャラを作り、文化祭が始まる前に宣伝すれば、他の出し物より目立つことができ、人気もでるはずと意気込む部員たち。
運動神経が抜群でいつも明るい陽佳。
残念な性格ではあるが、頭が良く、常に学年1位の神無。
由緒ある名主のお嬢様で家事全般が得意な佐優理。
優也と幼馴染である3人は、協力して自分たちの部活を守ろうとする。
順調に見えたゆるキャラ計画だったが、これをきっかけに誰も予想していない斜め上の展開を迎えることに・・・
市の活動も順調に進み、表彰を受けることになった主人公達。
しかし、指定された場所に主人公が向かうとそこには血溜りに佇むいざえもんの姿が…
この凄惨な事件をきっかけに、今まで微妙なバランスを取っていた主人公とヒロイン達の関係もヒロイン達の心も壊れ始める。
皆、「誰が犯人なのか」という疑心暗鬼の闇にとらわれ、病んでいくことに。
こうした疑いは解消されるどころか、さらなる事件の発生によって、より深い闇にとらわれていく…
最初はトマトジュースを派手にこぼしたんだと思った。
他の可能性なんて考えられないし、絵の具は置いていない。
だけど、鉄の臭いが違和感としてあった。
トマトとは似ても似つかない生臭さが充満し、思わず鼻を摘まんでしまった。
そして、視線は控え室の奥へと向けられた。
如月優也「・・・そんな・・・何故・・・」
日常から逸脱したものはそうと認識できない。
たとえ最悪の事態を想定していたとしても、俺たちには経験が足りない。
人の生き死になんて物語の中でしか見ていないんだから。
NEW
そこにはあった。
血溜まりの中で沈み、物言わぬ亡骸と化した人間が、
服は真っ赤に染まって、まるで最初からその色だったようで。
どうしてか分からないけど、身体が定期的にびくんびくんと跳ねたりしてて。
そして、そして――
その傍らには、包丁を持った着ぐるみが、首をゆらゆらと揺らせて佇んでいて。
何もかも現実味がない。
大勢が行き来していたのにとか、
どうして誰も気づかなかったのかとか、
そんなことは考えられなくて。
着ぐるみの中に誰が入っているとか考える間もなく。
ただ喉が乾いて、何も言葉が出てこなくて、息が荒くなるばかりで。
そして――