Web小説『エトワールお嬢様の冒険』

エピローグ
『新しい家族』

馬車に揺られながら、エトワールは遠い目をしてため息を吐いた。
あと一時間もすれば、我が家のあるマザーグリーンに到着するだろう。

戦いに疲れ、傷ついた二人のボディーガードは、揺れなど気にせず気持ちよさそうに眠っている。
疲れているのはエトワールも同じだったが、とうてい眠る気分にはなれなかった。

エトワール
「ワタクシたち……このさき一体どうなるのかしら?」

これまであまたの戦いを乗り越えてきたが、これからはじまる戦い──子育てほど困難な戦いはないだろう。
そのことを考えると今から気が重くなる。

エトワール
「ワタクシに、この子の母親になる資格があるのかしら?」

しかし、逃げるわけにはいかない。
この子を育てるのは自分の責任なのだ。
ヒザの上で眠るクレアを見て、エトワールは決意を固めた。

エトワール
「いいこと?
今日から、あなたの名前はクレアトゥール・ローゼンクイーンよ。」

返事はなかったが、スヤスヤとかわいい寝息を立てているクレアの天使のような顔が、エトワールの心に重くのしかかっていたものを少しだけ軽くしてくれた。

― 終 ―