第二回【ボツの巻】

ゲーム制作をしていく過程で作られたすべての素材が陽の目を見るわけではない。

物量、時間、クオリティなど様々な事情により、ボツになっていくアイデアや素材は山ほどある。

必ずしもダメだからボツになるわけではないのが、またツライところで、中には面白いアイデアもたくさんあったりする。その悔しさが次のゲームに繋がることもあるのだが、実際には永久に埋もれてしまうものがほとんどだ。

今回は『ファントム・キングダム』のボツ素材のひとつを披露し、可哀想な彼らを供養しようと思う。


本作『ファントム・キングダム』のイベントシーンは、これまでのものと違う、一風変わった演出を取り入れようという話で制作進行していた。

続々と集結する魔王たちを画面の中に詰め込まなければならないことも踏まえ、キャラデザの原田氏に下のようなチビキャライラストをお願いした。

このかわいいチビキャラたちが画面の中を飛び回り、楽しく演出してくれるわけだ。

うん、面白そうだ。

魔王ゼタ
予言者プラム
破壊神アレクサンダー
邪神ヴァルヴォルガ


しかし、このかわいいチビキャラたちには大きな問題があった。

シリアスな芝居ができないのだ。

実際のセリフと合わせて実例を挙げてみよう。

プラム「……なぜなの?
    なぜ彼は創造したばかりの魔界で
    待ち伏せすることができるの!?」

プラム「最初は偶然かと思ったけど……違う!
    これは偶然なんかじゃない!」

とか、


アレク「さすがだ、ゼタ。
    それでこそ、オレ様の生涯の宿敵だ。」

…………ダメだ。全然シリアスにならねぇ。

むしろ、この姿でシリアスな芝居をされても笑いがこみ上げてくるだけだ。


というわけで、あえなくボツ。
すごくかわいいデザインで気に入ってたんだけど……残念。

いくらデザインやアイデアが良くても、全体のバランスを見て、ボツにしなければならないときもあるんです。

ゲームっていうのは、こういうボツにされたものたちの屍の上に成り立ってんです。

さようなら、ボツ素材たち。

キミたちの死は無駄にしないよ……。



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