②理想探偵


 ごきげんよう、窓際探偵よ。

 実は私ね、イジメが原因で会社を辞めたあと、
 ずっと一人で引きこもっていたの。

 でも、賞金目的で描いた絵をコンテンストに出したところ、ビックリ。

 なんと、私の絵に指名手配犯が描かれていたことで、近所に潜伏していた『明けぬ夜事件』の残党が捕まったらしいの。
 よく分からないけど、私が日がなボーッと窓から眺めているうちに、無意識に記憶してしまっていたそうだわ。

 おかしな話よね。
 でも彼女――理想探偵はその話を笑わず、単なる偶然とも考えずに、私を自分の組織『探偵同盟』に誘ってくれた。

 ずっと閉じていた私の部屋の窓を、あの子が開けてくれたの。

 理想探偵は探偵同盟のリーダー。
 序列2位なのに、リーダーなんて、笑っちゃうわね。

 でも、みんな知っている。
 探偵同盟が、彼女の存在で成り立っていることを、知っている。

 だから、私も、彼も、あの人も。
 全員そろってリーダー扱い。

 まるで、学校の優等生みたいに。
 まるで、エサを待つ犬みたいに。
 まるで、指導の行き届いた兵士みたいに。

 探偵はみんな彼女の指示を待っているわ。

 ああ、理想探偵。
 その紫陽花色の瞳には、何が映っているの?

 教えて。
 ねえ、教えて――。

 ……ああ、ごめんなさい。
 また、ついつい筆が乗ってしまったわ。

 探偵たちの中には、エリートばかりではなくて、
 私のような社会不適合者もいることを知ってほしかったの。

 じゃあ、また次の窓辺で。
 ……あなたの前にも、心から信じられるヒトが現れることを、願っているわ。