③八ツ裂き公事件~前篇~


 ごきげんよう、窓際探偵よ。
 半年で100人以上が死んだ『八ツ裂き公事件』は、あなたも知っているわね?

 よくこの探偵史編纂室にサボりにくる広報探偵によると、今まさに、本部で行われる対策会議のメンバーを選定中だそうよ。

 ああ、私?
 絶対に参加したくないから、あらかじめ、断固拒否しておいたわ。
 この探偵史編纂室だけが私の居場所。
 そうやすやすと、絶海の孤島になんて行くもんですか。

 ……でも意外なことに、普段ならあの手この手で籠絡を試みる理想探偵が、今回に限って、大人しく引き下がったのよね。

 何だか、おかしいと思わない?
 八ツ裂き公事件の捜査では、私は力不足ということ?

 見限られたみたいで、何だか嫌。嫌。嫌……!

 あ、筆が乗りかけてる?
 ごめんなさい……。

 私の特技は、想いを込めて絵を描き起こすと事件の手がかかりが描き出される『真相絵画』。

 私だって探偵なのだから、八ツ裂き公事件の捜査の、一助になってみせるわ。

 あなたも私の絵を見て。
 気付いたことがあれば、私に教えて。
 私の絵に描かれる手がかりは、私自身でも認識できないから、あなたの力がいるの。

 どうかよろしくね。
 じゃあ……また次の窓辺で。