このコラムの原稿を書いているのは11月末。ちょうど来年2月発売予定の『勇者死す。』の絶賛テストプレイ中だ。テストプレイは、納品までの限られた時間内にさまざまな状況を再現しひとつずつ確認していくので膨大な時間がかかる。ゆえに効率的なプレイを極限まで追求することになる。言い換えれば、自分がデザインしたゲームなのに処理の甘い部分を探して本気で攻略するのだ。なんという自己完結SMプレイだろう(笑)。
というわけで今回は、ちょっと早いが、テストプレイ中にメモした攻略のヒントを書く。来年、攻略記事を担当するライターの皆さんはパクる、いや参考にするといいと思うよ。
魔王と相打ちになり死んだ勇者に神様が与えてくれた余命は5日。さらに勇者は時間経過とともに心身が衰えて魔法の呪文も忘れていく。2日目の午後には、瞬間移動魔法“デモルド”が使えなくなる。その後は街やダンジョン間の移動は徒歩か馬車。いずれも貴重な数時間を消費する。国の端から端までの移動となると1日がかり。余命が5日しかないのに大きな時間ロスだ。
だから“デモルド”が使えなくなる2日目の午後までに、どのイベントを片づけてどこでその呪文を忘れるかが重要となる。慣れてきたらこのタイミングを意識してコントロールしよう。理想は目標のイベントを解決し、デモルドの呪文を唱えて依頼者の待つ街に戻り、少し歩いたところで画面の中央に「デモルドの呪文が思い出せない・・・」とメッセージが表示されることだ。
「属性がついた武器や防具は、すぐに使わずとも見かけたらとりあえず確保しておけ!」と強くおすすめする。『勇者死す。』の世界では、鉱山には炎属性のモンスターが多く、海辺なら水、森なら風と、ダンジョンごとに属性の偏りが大きくダメージの補正も目に見えて効いている。ダンジョンに入ったらむやみに突っ込まず、適正な装備を吟味して取り替える。この習慣が身につけば各戦闘で1ターンは早くけりがつく。つまり1ターン分の敵の攻撃を受けずにすむ。体力を回復する魔法の使用回数も減りMPを温存できる。休憩の回数も減るから時間も節約できる。温存したMPは、ダンジョンの奥で待ちうけるボスと余裕をもって戦うために使う。倒したらその場から動かず、残ったMPで即ダンジョン脱出だ。
「余命5日なのだからできるだけ活動時間を増やしたい。不眠不休でがんばるぞ!」
世界を救うべき勇者ならそう考えるのも当然だ。だが休憩や宿泊をはさまず連続して活動していると、勇者のステータスは、正常→疲労→過労→衰弱と変化し、過労を超えると体力が急激に低下しはじめる。魔法も通常より早く忘れてしまう。睡眠十分の勇者は5日間なんとか働けるが、徹夜つづきの勇者は3日目あたりでチームのお荷物となる。
徹夜で仕事をしても効率は上がらない。現実世界と同じだ。ただし現実世界と同様に高価な栄養ドリンクやニンニク注射に頼ってでも無理を通さねばならない場面は必ず来る。ようは命の賭けどきを見誤るなということだ。
Vita版から葬儀のリプレイ機能を追加した。本来の目的は何度も転生しそのたび行われる自分の葬儀をときどき振りかえって感傷に浸るためだが、実は攻略にも役に立つ。チェックすべきは葬儀に参列したキャラではなく、いないキャラ。ようするにそのキャラはいまだイベントのフラグが立っていないのだ。次の周回の攻略目標にしよう。
ついでに……Vita版からの増えたもうひとつの新機能が“魚釣り”だ。何度もテストプレイしていると、今は4日目の18時だからイベントAをクリアするには8時間足りないとか、だいたいわかるようになる。そんな折は臨終を待ちながら釣糸をたれる。効率プレイの対極にある時間つぶしだが、この風情が不思議と心地いい。